第十三話 『ザ・メーカーズ誕生』

 バンド結成は決して容易ではなかった。各々バンドを組んでやりたい事をやっていたし、
かと言って「掛け持ち」でやれる程のプランではない事は解っていた。やるなら、今のバンドを辞めるしかない。
みんなもチャンピオンズに可能性を感じていたから大いに悩んだ。

数日間に渡った長いミーティングの末、4人中3人が決意を固めた。あと1人、佐藤小林がなかなか首を縦に振らない。
3人の嵐のような説得が続く。確か池袋のマクドナルドだった。沈黙を貫いていた佐藤小林がやっと重い口を開いた。


 「チャンピオンズ、名前がダサイねん。メーカーズに変えてくれるんやったらええよ」


ズコッ。名前考えとったんかい!まぁええわ、名前くらいお好きにどうぞ。
すると今度は「俺はメーカーズだったら辞めるね」と反対意見が飛び出す。
おぃおぃ名前ってそんなに大事ぃ??全く後一歩というところで決着がつかない。冷や冷やが続く。

 「じゃあ頭に『ザ』をつけない?」 そんな問題かい!

 「ザ・メーカーズいいねぇー!」 いいんかい!

これには反対がなくやっとバンドが成立した。1998年1月 ここにザ・メーカーズが誕生した。
最初はどうでも良かった「ザ」が今後の活動に大きく影響するなんて、この時は予想もしなかった。





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第十四話 『ゴールデンディズ』

 ザ・メーカーズがスタートしてから終了するまでの2年間は僕の人生にとって最も貴重な時間と経験だったと言える。
もしこの2年がなければ全然違う人生を歩んでいただろうし、今の自分はいなかっただろうと思う。
いろんな事を学び、たくさんの人達と出会った。人生観がこれまでと145度くらい変わった。

えっ、解散を後悔してるって?いいえ、解散もひっくるめてザ・メーカーズ劇場やから。

2年間って決めたけどアマチュアバンドが2年でやれる事は大体決まっている。
スケジュールとアルバイトに追われてあっと言う間に2年経つ。
ほんでメンバーの集中力が切れて考え方がバラバラになって解散というパターン。

僕らは2年で成功する為に逆算して余計な動きをなるべくしない方法を考えた。
とりあえず全員アルバイトを辞めて共同生活に入る。
ライブの売り上げだけでギリギリの日々を過ごし、公園でリハーサルをしながら腕を磨いた。
集中力を切らさない為に巨大な『にんじん』をぶら下げた。

『中野サンプラザワンマンライブ』

2年後、これがメジャーデビュー発表ライブになるのか、それとも解散ライブになるのか。
その日までただひたすらファン獲得の為にライブをやりまくるという、良くも悪くも解りやすい活動になった。





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第十五話 『プリーズストーリー』

 対バン…それは多くのアマチュアバンド達にとっての戦いの場。

仲良く共演とか言っときながら腹の中では他バンドのファンを狙っている。
それに勝たなければ上には行けない。他バンドのファンをこっちに振り向かすの為にあれやこれや手を尽くす。
みんなビジュアルを磨いたり、曲調をポップにしたり試行錯誤しながら戦っている。

逆に「俺たちはファンに媚びない」と言う売りで媚びてるバンドもたくさんいた。
媚びずに媚びるという技はかなり難しい。無理です。

そんな中ザ・メーカーズには決定的な『売り』がなかった。
4人ボーカル、オレンジチェックのシャツ、計算されたMC。あと一つ足りない。焦った。
そこでアイテムとしてCDをライブで販売する事にした。最近ではインディーズシーンも定着し、
デジタル化も進み簡単にCDを作れる時代になったが当時はまだアナログ録音。
CDを出すのにかなりの資金が必要になる。
協力してくれる会社などを募りやっとの想いで人生初のCD『プリーズストーリー』の発表までこぎ着けた。





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第十六話 『トークを磨く』

 CD効果は予想以上に凄かった。ファン獲得にも勢いが増したがそれ以上に業界人との付き合いが多くなってしまった。
かなりハッタリが効いてしまったようだ。本当にこの時代まではCDが珍しかったんやな。
ラジオの出演機会は大幅に増え活動範囲が広がった。
付き合いで飲みに連れてってもらう事も増えプチ芸能人みたいな感じになった。

とは言えまだまだバンドが未完成だったから業界人達はズケズケといろんなアドバイスをしてきた。
「下手くそだからゴーストミュージシャンを付けろ」だの「名前が悪い」だの「パートを入れ替えろ」「整形しろ」などなど。
次の日会ったらみんな顔変わってたけど。

まぁでも一番言われたのがMCの事やね、おもんないって。
それは自分達でも認める所でなんとかしなければって思ってた。
偶然その頃MCKM(エムシーケイエム)というプロの司会者と出会った。
どうしたらしゃべりが上手くなるかと質問してみると「弟子になれ」と言われた。 翌日から彼の道場に通った。





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